今から三一〇〇年前、縄文時代後期、神山の北西山腹で大蒸気爆発が発生した。爆発で崩壊した山体は大量の岩屑流となってカルデラ平原仙石原に流下した。この岩屑流によってカルデラ平原が二分され、その上流部に芦ノ湖が生じた。芦ノ湖をつくった岩屑流を神山山崩れ堆積物とよんでいる。仙石原の湿原から多数の神代木が産することは古くから知られていた。その多くは神山山崩れ堆積物中に取り込まれ、化石として残されたものである。
C-14年代測定によれば、今から二九〇〇年前、つまり水蒸気爆発二〇〇年後、神山の爆裂火口底を押上るマグマの上昇がはじまり、小ドームができた。マグマはさらに突きあげられ、ドームの屋根を突き破って溶岩尖塔になった。この尖塔が現われた時、激しい爆発が起こり、赤熱していた溶岩は発砲しながら四散し、熱雲(高温の粉体流)となって主にカルデラ西部にひろがった。これを大涌谷火砕流と呼ぶ(大木、袴田 一九七七)。大涌谷火砕流にとりこまれ、完全に木炭化された樹木のC-14年代が二九〇〇年BPであった。
現在、大涌谷・早雲地獄などで激しい噴気活動が見られるのはマグマの貫入がたった三〇〇〇年前まであったことによる。